令和8年度税制改正大綱の主要ポイント解説

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2025年12月19日に、「令和8年度税制改正大綱」が公表されました。

中小企業経営や個人の実務に直結する主要な5つのポイントを、大綱の内容に基づき分かりやすく解説します。

1.インボイス制度にかかる経過措置の見直し
(1)インボイス制度により、これまで消費税を納めていなかった免税事業者が、インボイス発行事業者登録を行い課税事業者となった場合、消費税の納税が必要となります。この事務負担増を和らげるため、当初は納める消費税額について、売上にかかる消費税額の2割に抑える「2割特例」が設けられていました。これは令和5年10月1日から令和8年9月30日までの期間に限って適用される措置です。

大綱では「2割特例」が終了した後の取り扱いが示されました。具体的には、免税事業者からインボイス登録をした個人事業者は、令和9年分および令和10年分の2年間に限り、納める消費税額について、売上にかかる消費税額の3割に抑える「3割特例」が適用されることとなります。
(2)免税事業者からの仕入れ税額控除: 免税事業者等からの仕入れでも一定割合を控除できる経過措置の期限が2年延長されます。控除割合は段階的に縮減され、令和8年10月からは7割、令和10年10月からは5割、令和12年10月からは3割となり、令和13年9月末で終了します,。

2.「少額減価償却資産の特例」の拡充・延長
中小企業が一定条件のもと、取得価額30万円未満の減価償却資産を「即時償却」できる「少額減価償却資産の特例」が拡充・延長されました。対象となる取得価額が「40万円未満」に引き上げられ、令和11年3月31日まで3年間延長されました。なお、従業員数が400人を超える法人は対象外となります。

3.「年収の壁」関連:基礎控除等の引き上げ
「年収の壁」への対応として、所得税の基礎控除および給与所得控除の見直しが行われ、いわゆる「178万円の壁」に引き上げられることになりました。基礎控除・給与所得控除の最低保障額がそれぞれ4万円ずつ引き上げられたほか、合計所得金額が655万円以下の人は、基礎控除の控除額にさらに42万円加算されます。また、新設された「給与所得控除の最低保障額の特例」により、給与所得控除の最低保障額がさらに5万円引き上げられます。

4.デジタル化に対応した青色申告特別控除の上乗せ措置
75万円の青色申告特別控除」の新設:

仕訳帳・総勘定元帳を電子計算機で作成し、電子帳簿保存法の要件を満たしたうえで、次のいずれかに該当する場合、控除額は75万円になります。

・帳簿の電子保存を適正に行っていること(訂正履歴・検索機能・出力可能性など)
・特定電子計算機処理システムを使い、電子取引データを帳簿と連携し、改ざん防止やトレーサビリティを確保した状態で保存していること

5.暗号資産取引に係る課税の見直し
暗号資産(仮想通貨)の取引に関する課税が見直されることとなりました。従来、暗号資産は雑所得として総合課税の対象でしたが、本改正で、国民の資産形成に資する暗号資産に限って、株式や投資信託と同様に分離課税※が適用され、他の金融商品の利益と損益通算できるようになり、最大3年間の繰越控除も可能となりました。
※分離課税とは、給与などの所得と切り離して一定の税率(通常20%程度)で課税する方法です。

 

※本ページおよび本ページからリンクされている各ページの内容は、「令和8年度税制改正大綱」に基づき、一般的な概要をまとめたものです。そのため、今後国会に提出予定の法案等の内容を確認する必要があり、当該法案等の成立状況によっては、本資料に記載した内容と異なる取扱いが定められる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

投稿者
菊地 瑞記
代表税理士 菊地 瑞記

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